庭の桜、隣の犬

ちょっと前に、角田光代「庭の桜、隣の犬」を読んだ。



角田光代らしい小説と思う。



夫婦の物語。なんとも盛り上がらない2人である。
そこがいい。
小さな事件は起こりつつも、いや、夫婦としては大きな事件もあるのだけど、それを感じさせず、なんとなく、淡々と物語は進む。
ある意味、なんで結婚してるのか、今ひとつ良くわからない。
それも途中で、少しだけ解明される。


夫婦の物語ではあるが、私や角田光代と同世代の人に共通な、個々人の感覚を描いているのではないだろうか。とくに、夫の感覚はそれを反映していると思う。


最後も、別になにも起こらないし、希望が見えるわけでもない。でも、少しだけ読後感をゆるやかに、気持ちを軽くさせるのは、著者のトリックかな。