絲山秋子「イッツ・オンリー・トーク」

昨日は、お出かけして買い物。
昼間、ラーメンと生ビールで、まずはいい感じ。
食べながら、そして電車に乗っている間、
絲山秋子「イッツ・オンリー・トーク」(文春文庫)を読んだ。
表題作と「第七障害」を収録。
絲山秋子を初めて読んだのが「逃亡くそたわけ」。
そのときは、ひとことで言えば「厳しいなぁ」と思った。

「イッツ・オンリー・トーク」は傑作ではなかろうか?
今、少し見返して、(今ごろ)思ったのだけど、
この作品は、「失っていくこと」が主題。
どちらかというと、最近の作家さんというか、自分が好きな作家は
「あらかじめ失われている」という意味での喪失感を描いている人が多いんだけど、
この作品は「失っていく」ことを描く。
ただし、失ったことで喪失感を感じるのではなく、
失うことが前提というか、失うことを予期している。あるいは、失うことに対する諦め。
そういう意味では、あらかじめ失っていることと同じなのかもしれない。
ただし、そうなってしまったのは、友人の死という大きな「失った」経験がきっかけになっているのかもしれないが。
そして、「逃亡くそたわけ」と同じで、エンディングを迎えても何の救いもない。
この、なんの救いのなさがいい。

「第七障害」は、失った後の回復していく話で、
これもまた、「イッツ・オンリー・トーク」と違った意味でよかった。

昨日はほかにもいろいろ買ったけど、また明日。